【JECの源流と歴史的遺産 ①】 -三つの要素とJEC-

一宮基督教研究所:安黒務

■JEC理解の鍵
日本福音教会(JEC)は、英語でジャパン・エバンジェリカル・チャーチーズと表現されます。「日本」と「教会」の部分は分かりやすいのですが中心にある「福音(エバンジェリカル)」という部分はあまり理解されていません。しかし、この部分を正しく理解することこそがJEC理解の鍵なのです。
■JECの全体像
目の見えない三人が象の一部分を触って「象とはホースのようなものだ」「象とは柱のようなものだ」「象とはロープのようなものだ」と証言したそうです。これは正しい象の姿を表現しているでしょうか。私は信仰者としての初期に「ウォッチマン・ニーの『キリスト者の標準』を読んだことのない人はJECのメンバーと認めたくありません。」と聞かされて「JECとは十字架のメッセージの群れなのか?」、聖霊カリスマ・セミナーで聖霊のバプテスマ(もしくは満たし)の経験すると「JECとはカリスマ的な群れなのか?」、スウェーデン宣教師の背景はスウェーデン・バプテスト諸教会と知ると「JECとはバプテストの流れなのか?」等々。私のJEC理解はその時その時に“カメレオン”の皮膚の色のように変化しました。そのようなJECの一員である私たちにとって「JEC」の一部だけではなく、その全体像を知ることはとても大切なことです。私はJECの全体像を理解するためのキーワードは「エバンジェリカル」であると思います。そこで、日本福音教会の名称の中心部分にある「福音(エバンジェリカル)」について十二回に分けて解説させていただきます。
■エバンジェリカルの意味
私は「福音(エバンジェリカル)」という意味には「イエス・キリストの死・葬り・復活の福音を単純に信じる」という素朴な意味と、「福音主義神学に立つ」という神学的な意味があると思います。私はKBIで「福音主義神学」という科目を担当しています。それは「福音主義キリスト教と福音派」(宇田進著)を基本テキストとして「神学生一人一人の所属教派の信仰の源流と歴史的遺産を探求する」ことを課題にしています。そこで教えられてきたことは、JECとは二千年の教会史において幾重もの発展や発達過程を経て生成を見るに至った生きた実体であるということです。
■三つの重要な要素
それでは、二千年の教会史における「JECの源流と歴史的遺産」を以下の三つの要素に注目しつつ見てまいりましょう。まず第一に、最も根本的な要素として神学的・教理的要素があります。つまり、何を信じているのかの問題です。JECは「聖書信仰」に立っていると主張されますように、穏健で中庸な、バランスのとれた一定の神学的立場に立っています。第二に、歴史的要素があります。JECの背後には、カリスマ運動、ケズィック運動、バプテスト運動、会衆派ピューリタン運動、等々の特定の歴史的運動が存在しています。よく「現在の根は過去に深く根ざしている」とか、「教会の歴史は現在を解明する」といわれるところです。第三に、社会的、文化的要素があります。JECという現象は歴史における一つの社会的・文化的現象という一面を持っています。区別できるJEC独自の行動様式を分析することによって、JECの立体的な把握を得ることができます。